過去のイチオシ
ゴールデンスランバー

伊坂幸太郎
新潮社
税込 1680円

---テレビからは、アナウンサーの、「爆発です爆発です」と無闇に繰り返す声だけが聞こえた。
今回は第5回本屋大賞受賞作『ゴールデンスランバー』をご紹介します。
男は、自分が、確かに首相暗殺の犯人として報道されているのを見て、戦慄した。これは一体、誰の悪意なのか?!
濡れ衣を着せられた男は、独り、逃亡を企てる。果たして、正体の見えない巨大な陰謀の渦から逃げ切ることはできるのか・・・!
緻密に練りあげられた、サスペンスフルな物語。伊坂幸太郎の集大成、ここに
ティファニーで朝食を

トルーマン・カポーティ著 村上春樹訳
新潮社
税込 1260円

---彼女はほっそりしたクールな黒のドレスに、黒いサンダルをはき、真珠の小さなネックレスをつけていた。---
カポーティの分岐点となった作品『ティファニーで朝食を』が、村上春樹訳で登場。今回はそれをご紹介します。
ヘップバーン主演の映画の印象が随分強いこの作品ですが、もちろんまた違った魅力が原作にもあり、読ませます。
若さゆえの魅力と輝きと、奔放さ、愚かさ、そして若さゆえの哀しみ。
失うことで段々私達は「大人」になってゆくのでしょうか。反対に得られるものは何があるのでしょうか。
読了後、ふとそんなことを考えてしまった本作品です。
宇宙への秘密の鍵

ルーシー&スティーブン・ホーキング著
さくまゆみこ訳
岩崎書店
税込 1995円

---ジョージは学校でも大きな疑問を先生にぶつけてきたのだが、たいていは、「来年になったら習うから」と言われるだけだった。そんな答えを聞きたくて質問したわけじゃないのに。---
私たちが今暮らしているこの地球という星が、宇宙という空間に浮かんでいて、球状で、太陽の周りを回っていて、月という衛星を一つ持っていることは、誰もが知っていることだと思います。
では、地球と太陽の距離はどれくらい離れているのか、とか、月は地球の何分の一の大きさか、とか、太陽系で地球は何番目の大きさなのか、去年惑星認定が外されて話題になった冥王星とはどんな星か、なんてこと、ぱっと答えられる大人って、意外に少ないのではないでしょうか。私はもちろん、答えられません。
ましてやブラックホールの秘密ともなればなおのこと。
そんな「?」に答えてくれるのが本作品。科学的事実に基づき、しかも専門用語を使わずにとっても分りやすく、とっても楽しく知ることができます。
子どもにはもちろん、大人にも是非読んでもらいたい素敵なファンタジーに仕上がっています。
星や宇宙の秘密を垣間見ることで、違って見えてくることがあると思いますよ!
パプリカ

筒井康隆
新潮社
税込 700円

---「実はその、パプリカの出動を要請したい」
今回は「発表!今読みたい新潮文庫」の中から筒井康隆作品のご紹介です。
パプリカとは、人が見る夢を詳細に分析して、不安症などの治療をするエキスパートの暗号名なのです。
夢とは本来自分ひとりだけが見るものですが、作品中では革新的な技術によって、画面で視覚化、ビデオのように再生、早送りしたり巻き戻したりできるようになっています。
他人の見る夢。それを見るということ。
非常に魅力を感じると同時に、私は恐怖心も持つのですが、一度くらいは覗いてみたい、そんな世界ではないでしょうか?
その名にちなんで

ジュンパ・ラヒリ著 小川高義訳
新潮社
税込 740円

---ゴーゴリ---列車事故から奇跡的に父の命を救った本の著者にちなみ、彼はこう名づけられた。---
自分の名前の意味や由来をご存知でしょうか。また、自分の名前は好きですか。どっちにしろ、名前とは、一生ついて回るもの。
ベンガル人でありながらロシアの文豪の名をもらい(しかもそれはファミリーネームだったりします)、なんだかその名に振り回されて日々を過ごす主人公。
彼は嫌いだった名前の由来を知ったとき、実は深い想いに育まれてきたことを理解します。
秘めた熱を感じさせる、端正で、細やかな文章。家族の愛情、そして生きることの喜びと哀しみが穏やかに、鮮やかに描かれています。
キマイラの新しい城

殊能将之
講談社
税込 730円

---「で、こいつが『自分を殺したのが誰かわかるまでは成仏できない。専門家をつれてきて調べさせろ』と言う。…」---
講談社文庫新感覚ミステリーズより、殊能将之作品のご紹介です。
殺人事件の依頼主は、被害者本人。つまり既になくなっているいる人物。更に、それは750年前の中世の騎士だと言うから、面食らうことこの上なし。
始まりからすでに、一筋縄では行かないことが炸裂してます。おまけに名探偵という鳴り物入りで登場した人物の情けないこと、頼り甲斐のないことと言ったらもう。
最後にはいろんな意味での大どんでん返しが待ち受けている訳ですが、「そんなのアリか?!」と思いつつも、楽しい時間を過ごさせてくれる本作品。オススメです。
サウンドトラック 上下

古川日出男
集英社
税込 上600円下630円

---六歳のその子供が音楽の絶対の死に触れて世界から切り離されたおなじ日、おなじ夜に、おなじ狂濤が別の子供の運命をもてあそぶ。---
眼前で父を失った少年と、母の手で殺されそうになった少女。二人は血の繋がらない兄妹になる。二人を包む世界は公平で何一つ過不足は無かったのに、そこに闖入してきた大人たちの手によって、平穏は奪われた。
二人はそれぞれの場所で、復讐を決意する。
集英社文庫夏の一冊より古川日出男『サウンドトラック』の紹介です。
物語は少し過去から始まり、少し未来まで続いてゆきます。不安な、でも痛快な預言を孕みながら。自分は復讐する側される側、どちらの立ち位置だろう、と考えると更にスリリングかも。
物語は東京が舞台。西荻も重要ポイントとして登場しますよ!
硫黄島に死す

城山三郎
新潮社
税込540円

---〈おまえたちは本当のことを教わっていない。おまえたちの信じている世界は、狭くてちっぽけなものなんだ。本当の世界は……〉---
新潮文庫の100冊より、今回は城山三郎『硫黄島に死す』をご紹介します。
大きな大きな犠牲を払い、大変な数の人命を損ない、日本は戦争を終えました。それから60年以上、私たちは幸なことに一度も戦火に見舞われずにやってこれました。それはどうしてなのか。一体何故戦争を選択せずに暮らせているのか。
私たちは戦争を知りません。だから色々な断片を出来るだけ掻き集めて想像するしかない。
戦争で死ぬということ。生き残るということ。その後どうやって人生を紡いでいくのかということ。この作品が静かに語りかけてきます。

巷説百物語

京極夏彦
角川書店
税込640円

---「万物の長たる人様を、禽獣が化かすことなどあり得ねェ。正に笑止千万。化かされるのは己の所為。」---
角川文庫、夏の百冊の中から、京極夏彦の妖怪時代小説シリーズの第一弾のご紹介です。
作家本人が妖怪大好き!ということもあって作中には有名所から知らないな〜、という様々な妖怪が登場します。これは非常に怪しい。
妖怪は科学を知らなかった時代の迷信や妄想ではないのです。現代でも私たちの心に巣食っているのです。 「心理学的観点から言うと…」なんて野暮はいいっこなし。 ふとした拍子に、実は影響を受けてるかもしれませんよ…?
この作品は短編小説として読んでも面白いですが、通して読む進めるうちに作者の巧みな誘導によって少しずつ深みに嵌ってゆくのです。気が付いたときには、罠のど真ん中。これがまた、快感です。

買物71番勝負

平松洋子
中央公論新社
税込760円

---上等な女は、きっとこんな本を読んでいるのね。---
楽しいお買い物してますか?
私は元々物欲も余りないし、道具にもこだわらない性質なのですが。
このエッセイを読んでいたら、「わわわ、私もほしい〜〜〜」と思ってしまいました。 ある意味、なかなかキケンな本です。
とにかくいい物を探り出す平松さんの嗅覚がスゴイ!訓練を重ねた猟犬並みです。いや狩人というべきか。
キラっと彼女の瞳が光った先には、きっととってもいい獲物が!!
着いてゆきます。お供いたします。行き着く先は、愛すべきものたちに囲まれた世界?
ちなみに、今回の冒頭の一文は我が今野書店店員のコイデさん作のポップより。中央公論新社さんより全国展開いたします。オリジナルが見られるのは今野書店だけですよー!
プチ哲学

佐藤雅彦
中央公論新社
税込680円

---想像力(イマジネーション)は人間が持っている素晴らしい力のひとつです。その力が人生をより深く楽しくするのです。---
思うこと。考えること。想像すること。
単に好き勝手妄想するのではなくて、どうしてだろう、他に可能性はないだろうか、他の見方はないだろうか…なんていう様に。
日常に追われて、私たちの頭はコチコチに固まってはいやしないでしょうか。繰り返しの日常を受け入れつつも、ちょっと角度をいつもと変えて自分の周囲を、世間を、はたまた自分自身を見つめてみる。
結果、何も変わらないかもしれない。何か新しい発見があるかもしれない。
枠を外すコツをこっそりお教えします。
裁判長!これで執行猶予は甘くないすか

北尾トロ
文藝春秋
税込1100円

---「リアルだよなあ」この言葉を何度、心の中で呟いたことか。
2009年(平成21年)5月に、開始予定なのです。何かというと、裁判員制度。もうあと2年後です。
この制度に先立って、かどうかは判りませんが、北尾トロさんがライフワークの一つとして続けいている裁判傍聴の記録が、本になりました。これで『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』に続く2冊目。
事実は小説より奇なりと云いますが…そうか、裁判ってこんなに色々な人生模様が繰り広げられていたのか…。でも考えてみれば、判決が、被告人だけじゃなくて被害者をはじめ多くの関係者の一生を左右する文字通りの大舞台なのだから、それも当然のことなのでしょう。
北尾さんの軽妙な語り口に笑っちゃっていいものかどうか迷いながらもついクスクスしたり、一緒にムッとしたり、時には涙をこらえたりしながら、前作と合わせて読めば、2年後に迫った裁判員制度もきっと恐くない…かも?
柳宗民の雑草ノオト

文:柳宗民 絵:三品隆司
筑摩書房
税込1050円

---四季それぞれに咲く花があり、咲く花によって季節を知る。
東京の23区内では、植えられた以外の草花に出会う機会はなかなかありませんが、 それでもやはり、ほころびる蕾や芽ぐむ枝先を見て、季節が変わってきたのだなと実感することはまだまだできます。
本書は、昔から私たちの身の回りにあった雑草と呼ばれる草花を、美しいイラストとともに思い入れたっぷりに綴った文章で紹介しています。
登場する植物の名を、何種類ご存知ですか?
よくみかけるけど、名前は知らなかった、なんてものも結構多いかも。また、同じ種類だと思い込んでいたものが、実は全然関係なかったりと、意外な発見に出会うことも。 知っていそうでなかなか知らない雑草の世界。
散歩するのにちょうど良い季節になってきました。この本を片手に、いつもよりゆっくり歩いてみませんか?
村上かるた うさぎおいしーフランス人

作:村上春樹 絵:安西水丸
文藝春秋
税込1600円

---「まったく世の中のためにはならないけれど、ときどき向こうから勝手に吹き出してくる、あまり知的とはいいがたい種類のへんてこな何か」が眠っているささやかな精神領域があるのかもしれません。---
この本面白すぎます。本、ではなくかるた、と言うべきなのでしょうか。 句一つ一つにささやかというには余りにも…(ご想像にお任せ。お好きな語句をどうぞ。)なショートショートがくっついていて、それもまた、「く、く、く」だったり、「…プーッ」だったり、「(ニヤリ)」だったりする可笑しさをそえています。
愉快です。気が抜けます。そしてなんだかホッとします。
なんたって、春ですから。この本を読んで張り詰めている何かを、すこしくらい緩めてみてはいかがでしょう。
間取りの手帖 remix

佐藤和歌子
筑摩書房
税込525円

---あなたはここに住めますか?---
間取り図、お好きですか?
私は好きです。引越しの予定もないのに、マンションや建売住宅の間取り図を見ながら、「この台所ならここに食器棚おいてー、冷蔵庫はこっち。あ、洗濯機もここにおくのかー、使いにくいかな?リビングのここにテレビが来るから、テーブルはこう、…ソファアセット欲しいよなー」などと、全く無責任な妄想をするのが楽しいのです。
しかし。本書に出てくる間取りたち、一筋縄ではいかないのです。「なんでこんなことになっちゃったんだろう…?」と思わずには居られないのです。でも、正真正銘、実際に、この部屋がどこかにあるのです。そして誰かが住んでいる。何故こんな間取りになっちゃったのかということも知りたいですが、それよりもまず、何故そんな変な間取りを受け入れたのか、そして満足しているか、住人の方に是非聞いてみたいところです。
夜は短し歩けよ乙女

森見登美彦
角川書店
税込1575円

---これは私のお話ではなく、彼女のお話である。---
今回は日本ファンタジーノベル大賞を受賞した、注目の若手作家森見登美彦のご紹介です。
大学の後輩に少々暑苦しいような思いを寄せる「私」。彼女の眼に止まりたいがために涙ぐましいような、馬鹿馬鹿しいような努力を続けます。だけど何だか方向性を間違っているのか、どうも枠の外でジタバタしているだけのような…。彼女はそんなことも露知らず、得意の二足歩行ロボットのステップを踏み、むんと胸を張って我が道をゆくのです。
この作品は一応恋愛小説ということになっていますが、なんというか、素直にそのわけ方でいいのかな、とも思ったり。青臭い、堪らなく青臭い何か…「青春」とか「恋愛」とか、そういう言葉に置き換えたくない私も、「私」と同じくらいひねくれているということでしょうか。
ピタゴラ装置 DVDブック 1

佐藤雅彦、内野真澄監修
小学館
税込2940円

NHKで放送されている「ピタゴラスイッチ」。その番組のエンディングに登場するピタゴラ装置のメカニズムを解説する本が、DVD付きで発売されました。心待ちにしていた方も多かったのでは?(実は私も!)
たった数秒間の撮影のために費やされた知力と労力は、一体どれくらいのものなのか…!一つ一つは単純なのに、それが組み合わさると思いがけない動きとなってフィニッシュ。おなじみの番組タイトルが登場します。
装置に使われている道具は、定規や紙コップや毛糸やロウソクだったりと、身の回りにある日用品。親しみも湧きますが、応用されているのは「ベルヌーイの法則」、「流線曲率の定理」と耳慣れないものだったり。
「どうしてかな?」「自分にもできるかな?」と知的好奇心が刺激されること間違いなし。この本を読んで、春休み、子ども達とトライしてみては?
不都合な真実

アル・ゴア著 枝廣淳子訳
ランダムハウス講談社
税込2940円

---私たちは地球の生態系と衝突しており、その結果、生態系の最ももろい部分がボロボロと崩れつつある---
新年最初にご紹介する本は、元アメリカ副大統領アル・ゴア氏の、地球温暖化に対する警鐘を鳴す活動を追ったドキュメント映画『不都合な真実』(1月20日より公開)を書籍化したものです。
毎年毎年、世界各地で異常気象だと云われつつ、私たちは自分達の生活は何も変わらないと信じている。被害を被っているのはどこか遠い国のことで、自分達にはあまり関係のないことだと信じている。そもそも温暖化なんて、本当に起きているのかどうか---そうお考えの方は、是非ご一読を。
文中に、これから先2、3年間の私たちの活動が、地球の環境を取り戻すのに間に合うか、手遅れになるかの大きな分かれ目だと云う科学者も居るといいます。今、不都合な真実に目を向ける勇気を、私たちは持たなければなりません。
このマンガがすごい! 2007・オトコ編 2007・オンナ編

宝島社
宝島社
税込 790円

---「このお店の人って老眼鏡も制服のひとつみたいね」
このセリフが何のマンガのものか判るあなたは、かなりのマンガ好きですね?
今年も残すところ一ヶ月を切りました。2006年は、どんな本やマンガに出合いましたか?また、読みたいと思っているものは読めたでしょうか?
宝島社から、今年の本当に面白かったベスト10をオトコ編、オンナ編と分けて発表。あなたのお気に入りの作品は、果たしてランクインしているでしょうか?各作品に寸評が載っているので、知らなかったあの作品、気になっていたこの作品のことなど、実際に読む前にちょっと知っておくのはいかがですか。
同じ宝島社から『このミステリーがすごい!2007版』も好評発売中!
家族を守る災害行動マニュアル

加納一郎
朝日文庫
税込 441円

---地震は、心の準備がないときに突然やって来て、有無を言わせない。
この本は、阪神淡路大震災、新潟県中越地震を踏まえ、現在最も危惧されている東海地震を想定して、そのとき私たちがどのような状況に見舞われるのか、またどのような行動をとるべきか、などをわかりやすく解説しています。
交通機関がストップしたときに、職場から自宅まで、歩いて帰ることは出来ますか?一般的に健脚と呼ばれている人でさえ一日に歩くことが出来る距離は、装備があって40km前後だと言われています。体力に自信はありますか?道順はご存知ですか?何を持って、何をおいてゆくべきか?怪我をしたときの対処は?家族が集まる避難場所は決めてありますか?連絡の取り方は?…等々、持ち出し品を決める以外にも、事前に準備が必要なことは結構沢山あるのです。この本を読んで、勉強しましょう。
きっこの日記

きっこ
白夜書房
税込 1365円

---それで、あたしは、この、やり場のない怒りを「きっこの日記」に書くようになったってワケだ。
ブログは世の中に数多くあれど、これほど有名で、影響力が大きいブログもないのでは?  「きっこの日記」、大望の書籍化です。
他のものとは一味も二味も、いえ、もう全然違います。著者のぐいぐい押してくるような、だけど繊細さも感じとれる文章。
話題は母さんのこと、政治のこと、俳句のこと、猫のこと、晩ご飯のこと、 仕事のこと、パチンコのこと、芸能人のこと…多岐にわたっていて、どのページからも彼女のパワーがみなぎって来ます。
一緒ににやりとし、怒りを覚えたり、そして時には、思わず涙が零れそうになることも。
この評の冒頭は、何故きっこさんが政治に関心を抱くようになったかという理由とつながっているのですが…それは皆さんが是非手にとって確かめてください。


マイブック 2007年の記録

大貫卓也 企画
新潮社
税込 340円

---これは世界に一冊しかない、2007年のあなたが作る本なのです。
もう11月。2006年も残すところ2ヶ月!今年はどんな年だったでしょうか?
この本は開いてみると、ページ数と日付と曜日しか印刷されていません。だけど乱丁ではありませんので、ご安心を。
どういうことなのかというと、来年1年間でこの本を自由に埋めていってよい、ということなのです。手帳に使うもよし、日記にするにもよし、日付をまったく無視して何やら物語を綴ってみるのもありかもしれません。
来年のことを言うと鬼が笑うと言いますが、なんだかこの本、手にとって見ると、ワクワクしませんか?

おばけ桃が行く

ロアルド・ダール作 柳瀬尚紀訳
評論者
税込 1260円

---ものの三十秒で、メロンの大きさに! つぎの三十秒でそのまた二倍に!
何がって、 木になった桃が、です。この桃は、大変惨めな境遇の男の子(幼くして両親を亡くし、代わりにやってきた二人の叔母の彼に対する扱いのひどい事といったら)に怪しげな老人が手渡した「鰐の舌」という不思議なものを根本にぶちまけられた桃の木になった桃の実なのです。
最終的に一軒の家ほどの大きさにまで、桃は成長します。その桃に乗って、主人公ジェイムズ・ヘンリー・トットコ君と仲間になった愛嬌たっぷりの虫たち(百足やクモや蚕やキリギリスなど…)と冒険へ出かけることに。
テンポのいい訳と思いがけない展開のお話がとてもよく合っていて読んでいて大変、楽しい気分になること請け合いです。
アフターダーク

村上春樹 
講談社
税込 540円

---溝をトレースするレコード針。気怠く、官能的なエリントンの音楽。真夜中の音楽だ。
10月最初に紹介する本は、今やノーベル文学賞有力候補となった村上春樹の文庫最新刊です。
眠ったままの美しい姉、自分は凡庸だと信じている眠れない妹。
物語はたった一晩、真夜中から朝日が昇る頃に終ります。村上氏の物語から言えば、短い時間の中で終わってしまう作品ではないでしょうか。そのせいなのか割とあっさり読めてしまいます。
村上春樹入門として、オススメ。賞をとる前に、読んでおくのも一興では?

(発表後更新ログ…うーん惜しくも受賞ならず! 個人的に非常に残念。)
飛ぶ教室

E.ケストナー著、丘沢静也訳 
光文社
税込 500円

---賢さのない勇気は、乱暴にすぎない。 勇気のない賢さは、冗談にすぎない。
この作品の最も象徴的な文だと思うのですが、皆さんはどのように思うでしょうか。
ケストナーは、これをナチ占領下の時代に書きました。沢山の思いと、願いを込めて。
それから半世紀以上経ちました。まだ、ケストナーのこの言葉を私たちは実践できていないように思います。それどころか、ますますこの言葉の意味を深く噛みしめないといけないような…。
お江戸でござる

杉浦日向子 著
新潮文庫
税込 620円

夏休み到来!だけど外にお出かけするだけがレジャーにあらず。
遠いようで近い、近いようでやっぱり遠い場所が、この本の中にあります。読んだ後、お江戸へ小旅行したような気持ちに…。
最近、「日本人らしいあり方」についての本も多く出版されていますが、この本のようなアプローチもいかがでしょうか?
同時に発売された『4時のおやつ』、『ごくらくちんみ』 も、美味しくてほろ苦い、あったかくて切ない、楽しい本ですよ。